【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「……いろいろあったのですね」

 アナベルが眉を下げて微笑む。会場の人たちはこくりとうなずく。

(いったいどんなことをしていたのかしら、カルメ伯爵夫人……)

 少し気になったが、そこを追求するのはまた今度にして、アナベルは声色が明るくなるように意識して「そうだ!」と手を合わせた。

「みなさまは、どんな舞踏会が良いと思いますか? わたくしは舞踏会に参加した経験がありませんので……ぜひ、教えてくださいませ」

 踊り子としてステージで踊ったことはあるが、貴族が集まる舞踏会には行ったことがない。

 コラリーが考えるように顎に指をかけ、「そうですわねぇ……」と小さく言葉をこぼす。

「どんなテーマにするかを決めてから、どんな会場にするのかを考えたほうが良いと思います」
「テーマ、ですか?」

 コラリーはアナベルを見てこくりとうなずいた。

「そうです。舞踏会にはハッキリとしたテーマが必要ですわ。例えば、一年前に開かれた舞踏会では『花』がテーマでした」

 そのときのことを思い出しているのだろう。

 うっとりと恍惚の笑みを浮かべて、声が甘くなっている。アナベルは「素敵ですね」と言ってエルヴィスと腕を組んだ。

「本当に素敵な会場でした。『花』がテーマでしたから、至るところに様々な花が飾られていましたの。それだけ花が多いと香りが混ざり大変なことになるのではないかと思っていたのですが……」
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