【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
 そこで一度言葉を止めて、頬に手を添えるコラリー。

 アナベルはワクワクとした表情を隠さずに彼女を見た。

 彼女は大袈裟なほどに両腕を広げ、

「会場内はとても良い香りに包まれていましたの! なんと調香師が花の香りが混じり合っても良い香りになるように、いろいろと試したんですって! でしょう? デュナン公爵?」

 熱く語ってから、くるりとダヴィドに身体を向けるコラリー。

 アナベルは目を瞬かせて、「えっ」と思わず声を出した。

「あれは苦労したなぁ。人を不快にさせない香りにするために、どれだけ調香師と話し合ったかわからないよ」

 ダヴィドが肯定したことで、その舞踏会は彼が主催者だったことを知った。

「――人々への配慮(はいりょ)、ですわね」
「ああ。ちなみに紳士は胸元に花を一輪飾り、女性たち花冠を乗せて舞踏会に参加してもらったよ」
「それはとても華やかそうですわ」
「ええ。とても華やかで楽しい時間を過ごせました。あのときは本当にありがとうございました」

 コラリーがダヴィドに笑みを見せると、彼は胸元に手を当て、「こちらこそ、参加してくださりありがとうございました」と人懐っこそうに笑い、和やかな雰囲気が流れた。
< 131 / 255 >

この作品をシェア

pagetop