【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「では、どうやって寵姫に……?」

 (いぶか)しむように、眉間に(しわ)を寄せた女性が(たず)ねる。

 その問いに答えたのはエルヴィスだった。

「――私が強引に、寵姫の在り方を変えたのだ」

 ざわめきは一層激しくなる。

「ど、どういうことですか、エルヴィス陛下」

 困惑したような表情を浮かべる男性に視線を向け、エルヴィスは不敵に微笑む。

「ベルを結婚させてから……なんてもったいないからな。私は彼女のすべてを手に入れたかった。だから、少し……わがままを強行しただけさ」

 ――レアルテキ王国初の、未婚の寵姫。

 一瞬たりとも他の男の者になるのを許さないという、エルヴィスの独占欲。

(――ああ、彼は本当に彼女を愛しているのだ――……)

 エルヴィスが寵姫に対してこのような扱いをしたことなど、一度もなかった。

 帰るべき家を失ったものたちを、保護しているような関係だった。

 宮殿で寵姫たちは争うこともなく、静かに暮らしていた。エルヴィスが自分たちに興味がないことを知っていたから。

 住める場所を用意してくれた、食べるものを与えてくれた、温かなベッドで眠らせてくれた。

 ――寵姫たちはそれだけで充分だと笑っていたことを、コラリーは思い出す。

 彼女の友人も寵姫として宮殿で暮らしていた。たまに『一緒にお茶を飲みましょう』と誘ってくれて、そのときはお茶の時間を楽しんでいた。
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