【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
宮殿でどんなふうに暮らしているのか気になり、それとなく聞いた。彼女はほんの少しだけ目を伏せて、
『エルヴィス陛下は寂しいお方なの。誰も愛したことがないお方。私たちへ優しくしてくださるけれど、愛されることを望んでいない。どうやって恩を返せばよいのか、わからないの……』
と口にしていた。
魔物討伐に何度も向かう彼は、宮殿へ足を運ぶことが少なかった、と。
――そんな彼が、変わった。
コラリーは少し切なそうに目元を細め、ぎゅっと扇子を握りしめる。
(エルヴィス陛下がもっと早く彼女と再会していれば、あの子は助かったのかしら……?)
そう考えて、それを振り払うように頭を横に振った。
ただ、コラリーは願う。
――アナベルが、今までの寵姫たちと同じような目に遭わないことを――……
「……コラリーさま? どうかなさいましたか?」
「……いいえ、アナベルさま。なんでもありませんわ」
儚く微笑むコラリーに、アナベルは近付き、彼女の手をくるりとエルヴィスに顔を向けた。
エルヴィスは彼女の考えを察し、小さくうなずく。
「さて、今宵ももう良い時間だ。紹介の儀に参加してくれた全員に、感謝の意を伝えよう。ベル、いくぞ」
「はい、エルヴィス陛下。……コラリーさま」
『エルヴィス陛下は寂しいお方なの。誰も愛したことがないお方。私たちへ優しくしてくださるけれど、愛されることを望んでいない。どうやって恩を返せばよいのか、わからないの……』
と口にしていた。
魔物討伐に何度も向かう彼は、宮殿へ足を運ぶことが少なかった、と。
――そんな彼が、変わった。
コラリーは少し切なそうに目元を細め、ぎゅっと扇子を握りしめる。
(エルヴィス陛下がもっと早く彼女と再会していれば、あの子は助かったのかしら……?)
そう考えて、それを振り払うように頭を横に振った。
ただ、コラリーは願う。
――アナベルが、今までの寵姫たちと同じような目に遭わないことを――……
「……コラリーさま? どうかなさいましたか?」
「……いいえ、アナベルさま。なんでもありませんわ」
儚く微笑むコラリーに、アナベルは近付き、彼女の手をくるりとエルヴィスに顔を向けた。
エルヴィスは彼女の考えを察し、小さくうなずく。
「さて、今宵ももう良い時間だ。紹介の儀に参加してくれた全員に、感謝の意を伝えよう。ベル、いくぞ」
「はい、エルヴィス陛下。……コラリーさま」