【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。

紹介の儀 その後 2話

「いったい、なにをするつもりだい?」
「……慈善活動、かしら? 王妃サマ、一応やっているだろうけど……別の視点から、ね」

 エルヴィスは興味深そうにアナベルを見つめる。

 彼女はもう一口ワインを飲むと、じっとエルヴィスと視線を絡めた。

 見つめ合うこと数十秒。

 互いにプッと()き出した。

 紹介の儀で張り詰めていた緊張感が、ようやく切れた気がする。

 アナベルはワイングラスをローテーブルに置くと、胸元に手を置いた。

「ところで、エルヴィス陛下。わたくしがどうしてここへ来たと思いますか?」

 ソファから立ち上がり、ゆっくりとベッド近くへ移動する。

「……私は言ったはずだぞ?」

 エルヴィスもワイングラスをローテーブルに置き、ベッドの前に立ち彼に背を向けているアナベルに近付き、その細い肩に触れた。

 彼の体温を感じて、アナベルは顔を上げ、そろりと視線を移動させる。

 ぎゅっと後ろから抱きしめられた。アナベルは目を伏せて、彼の腕に自分の手を重ねた。

「――一度だけしか言わないから、よく聞いてね」

 ゆっくりと、アナベルが声を出す。その声は緊張からか少し震えていた。

「――どうか、わたくしを陛下のものにして」

 ――身も心も、あなたのものに。

 エルヴィスは目元を細めて、彼女を抱きしめる力を強めた。

 ゆっくりと力を抜いて、アナベルから少し離れると、彼女はエルヴィスと向かい合うように身体を動かし、それからふんわりと微笑む。
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