【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「――……」

 その笑みを見て、惹き込まれるようにエルヴィスが手を伸ばし、アナベルの頬に触れた。

 緩やかに近付いてくるエルヴィスに、彼女は静かに目を閉じる。

 思っていた場所ではなく、額に唇が落とされた。その感触にぱちり、と目を開けると、意地悪そうに目元を細めたエルヴィスと視線が(まじ)わった。

「――っ」

 子ども扱いを受けているような気がして、アナベルは彼の頬を両手で包む。

 エルヴィスは彼女の行動に目を大きく見開き、目元だけで笑った。

 背伸びをして、自ら口付けようとしたアナベルだが、身長差でうまくいかない。

 彼が「――ちょっと待って」と彼女の手を掴んで、自らベッドに座り、自分の膝の上にアナベルを乗せた。

「さぁ、どうぞ?」

 からかうような……それでいて真剣さを含んだ声。すっと目を閉じるのを見て、アナベルは再び彼の頬に手を添えて、ゆっくりと顔を近付けて唇を重ねる。

 ちゅっ、ちゅっ、と愛らしいリップ音を響かせながら何度か唇を重ね、彼の様子を(うかが)うように離れると――エルヴィスがアナベルの身体を抱きかかえるように腰に手を回し、自分のもとに引き寄せた。

「――後悔はしないな?」
「しない。だって、あたしが選んだの。――あなたを」

 顔を赤らめながらも、しっかりとした口調でそう伝えるアナベルに、エルヴィスは「そうか」とどこか嬉しそうに微笑む。

 アナベルの髪にキスをしてから、彼女をベッドに押し倒し、唇を深く重ねた――……
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