【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
 ◆◆◆

 翌朝。

 いや、すでに太陽は高く昇り、昼前のようだった。

 アナベルはぼんやりとした頭で天井を見上げ、「……あれ?」と小さくつぶやく。

 そして、自分の隣にエルヴィスがいることに気付き、昨夜の記憶が一気によみがえり顔を真っ赤にさせた。

(……寝ているの、かしら……?)

 目を閉じたままのエルヴィスをじっと見つめる。

 ……あまりにも静かに眠っているように見えて、思わず呼吸を確かめるように手を口元に近付けると、手首を掴まれた。

 えっ? と思う間もなく引き寄せられ、抱きしめられたアナベルは目を丸くして「え、エルヴィス陛下!?」と慌てたような声を上げる。

「……おはよう、ベル。いや、もう昼だから……おはよう、ではないか」

 くすりと笑う声。

(――面白がっているわね!)

 アナベルはムッとしたように唇を尖らせ、エルヴィスを睨む。彼は彼女を抱きしめたまま、甘く(とろ)けるような声でこう言った。

「――はじめてだ、こんな感情は」
「……え?」
「満たされている、というのは……こういう感じなのかもしれないな……」
「……陛下……」
「名を……私の名を呼んでくれ、ベル」

 甘えるようなエルヴィスの様子に、アナベルは目を伏せて一度深呼吸をしてから彼の名を口にする。

「エルヴィス」

 たった一言。アナベルが名前を呼ぶだけで、エルヴィスの胸に甘く広がった。

「……もっと、呼んでくれないか?」
「あなたが望むのなら、何度でも」
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