【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
 アナベルはエルヴィスが満足するまで、何度も彼の名を呼んだ。しばらく甘さに浸ってから、彼はベッドから起き上がる。

「……さて、今日はこのまま休んでいてくれ。私は少し、用事を済ませてくる」
「えっ」
「今日は無理をしないこと。いいな?」

 有無を言わせない口調と表情で、エルヴィスがアナベルに手を伸ばし頭を撫でてから微笑み、そのまま部屋をあとにした。

(――ッ、……ま、まあ、確かに動くのは大変だと思うけれど……)

 昨夜のことが再びよみがえり、枕に顔を押し付けて足をぱたぱたと動かしていると、扉がノックされる音が耳に届く。

「は、はい」

 反射的に返事をすると、メイドたちが数人、部屋に入ってきた。

「アナベルさま、身体の調子はいかがですか?」
「こちらを着てください。今日はゆっくりとお休みしましょうね」

 てきぱきと衣服を整えられ、混乱している中、メイドたちの意味深な微笑みが視界に入る。

 その笑みを見て、悟った。

 ――昨日、アナベルとエルヴィスが結ばれたことを、彼女たちは知っている――……と。

 真っ赤になったアナベルに、メイドたちが「可愛らしい寵姫(ちょうき)ですね」なんて朗らかに言われ、赤面した顔を隠すように両手で(おお)った。
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