【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
 当時の怒りが込み上げてきたのか、瞳の奥にめらめらと炎が宿っているように見えたアナベルは、困惑したように眉を下げた。

「娼館の求人って……」
「しかもそのあとに! 『ああ、あなたのような人では無理かしら』って笑われたんです!」

 わっと顔を(おお)って泣き出してしまったメイドを(なぐさ)めるように、頭を撫でる。

「……王妃サマに仕えている人って、どんな感じの人?」

 ふと気になって聞いてみると、メイドたちはぴたりと動きを止めた。

「確か、王妃陛下よりも若くて美しい人が中で働いて、王妃陛下よりも年上でパッとしない人は連れ歩いていたはずです」
「そして気が付けば入れ替わっています。田舎に帰ったとか、盗みをして処罰されたとか……」
「……そんなにコロコロと?」

 同時にうなずくメイドたちに、アナベルは目を瞬かせる。

「どこで見つけたのか、わからない人たちも結構いますね」
「……そうなの……?」
「とはいえ、その若くて美しい人はどんな扱いを受けているのか……」

 なにか思うところがあるのか、一人のメイドが目をそらした。

 そのことに気付き、アナベルは彼女にじっと視線を送る。

「なにか、心当たりがあるの?」

 アナベルの問いに、メイドはしばらく考えるように視線を巡らせて、小さく首を縦に振った。

「――これは、私の親戚が聞いた話なのですが――」

 と、切り出して話してくれた。

 その内容を聞いて、アナベルたちはゾッと背筋が寒くなったかのように自分を抱きしめる。

 あまりにも恐ろしい話に、絶句するアナベルたちだった。
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