【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
 柔らかい声色で続いた言葉に、メイドたちも微笑みを浮かべる。

 王妃イレインの噂話を集め、その話がどうかを確認する。地道ではあるが、証拠を掴むためにも一歩ずつ進んでいくしかない。

(――それに、いざとなったらあたしの魔法がある)

 幻想の魔法。

 これをうまく利用できれば、役に立つだろうと考えてペンを置いた。

「それにしても……なんだかこの噂の内容って、まるで怖い話のようね……」

 書き込んだ紙を見て、げっそりとした表情を浮かべて重いため息を吐く。

「そうですね。噂ですから脚色(きゃくしょく)が強くなっているのかもしれません」
「実際はどうかわからないものね……」
「事実は小説より奇なり、かもしれませんよ?」
「これ以上の可能性もあるとは、考えたくないわぁ……」

 じっと紙を見つめるアナベルに、メイドたちは「休憩しましょう」とお茶を用意した。手際よく()れられたお茶を渡されて、一口飲む。

 ほう、と息を吐くと、リラックスできたような気がした。

「おいしい……」
「ありがとうございます。お茶を淹れるのは得意なんです」

 自慢気に胸を張るメイドに、アナベルは「すごいわねぇ」と声をもらす。

「何年もお茶を淹れ続けた成果ですわ」

 嬉しそうに微笑むメイドに、アナベルは「なるほど」と納得した。

 自分の剣舞だって、最初はとても人に見せられるものではなかった。だが、練習に練習を重ねた結果、人々を()せるものになったと自負している。

(あたしにできること――……)

 アナベルはもう一度ペンを手にし、紙と向かい合う。
 
真っ白な紙に、今後やりたいことを書き込んでいくと、メイドたちは興味深そうに書かれていく文字を眺めていた。
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