【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「……アナベル、です」
「アナベルちゃんね。あ、ちょっと待って。誰かー、水っ! 常温の!」
「はいはい」
「はい、これどうぞ! 喉、乾いていたでしょ? ゆーっくり飲むのよ、ゆーっくり!」
コップに水を入れて渡されたアナベルは、チラチラと周りを見ながら、全員の視線がこちらに集中していることに気付いて、おそるおそるコップに口をつける。
こくり、と喉を鳴らして水を飲むと、乾いた喉や身体に浸透していくのがわかった。ゆっくり、と言われていたことを忘れて、ごくごくと飲み、水が気管に入ってせき込んだ。
「アナベルちゃん、大丈夫?」
慌てたように女性が声をかける。
そして、背中をさすってくれた。
「喉、カラカラだったんだねぇ。まだまだたくさんあるから、急がないでお飲み。ゆーっくり、ね?」
アナベルの顔を覗き込んで、女性が微笑む。
その姿が母に重なって、アナベルの目から大粒の涙が溢れてきた。
「あーあ、ミシェルがかわいい子を泣かせた」
「ちょっと! クレマン! 変なことを言わないでよ。もう、ほんっとうにこの人ったら!」
眉を吊り上げて唇を尖らせる女性に、アナベルはぽかんと口を開けた。
この女性の名がミシェルで、座長と呼ばれた男性の名がクレマンだということは理解できたが、彼らがどうして、こんなにも自分を気にかけてくれているのかがわからない。
「アナベルちゃんね。あ、ちょっと待って。誰かー、水っ! 常温の!」
「はいはい」
「はい、これどうぞ! 喉、乾いていたでしょ? ゆーっくり飲むのよ、ゆーっくり!」
コップに水を入れて渡されたアナベルは、チラチラと周りを見ながら、全員の視線がこちらに集中していることに気付いて、おそるおそるコップに口をつける。
こくり、と喉を鳴らして水を飲むと、乾いた喉や身体に浸透していくのがわかった。ゆっくり、と言われていたことを忘れて、ごくごくと飲み、水が気管に入ってせき込んだ。
「アナベルちゃん、大丈夫?」
慌てたように女性が声をかける。
そして、背中をさすってくれた。
「喉、カラカラだったんだねぇ。まだまだたくさんあるから、急がないでお飲み。ゆーっくり、ね?」
アナベルの顔を覗き込んで、女性が微笑む。
その姿が母に重なって、アナベルの目から大粒の涙が溢れてきた。
「あーあ、ミシェルがかわいい子を泣かせた」
「ちょっと! クレマン! 変なことを言わないでよ。もう、ほんっとうにこの人ったら!」
眉を吊り上げて唇を尖らせる女性に、アナベルはぽかんと口を開けた。
この女性の名がミシェルで、座長と呼ばれた男性の名がクレマンだということは理解できたが、彼らがどうして、こんなにも自分を気にかけてくれているのかがわからない。