【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「アナベルさま?」
「……いいえ、なんでもありませんわ。わたくしはわたくしにできる最善を尽くします」
王妃イレイン――彼女の本性がどんなものであるか、アナベルはまだ知らない。
ただやはり、あの作り物めいた美しさは、思い出すだけでもゾッとする。
「とりあえず、今日の訓練はこれまでです。汗を流してきてください。今日は陛下に頼まれてアナベルさまの護衛になりましたので、外に行きましょう」
「えっ?」
「あれ、聞いていませんか? アナベルさまが慈善活動をしたいそうだから、どんな慈善活動にするのか街を見ながら相談に乗ってほしいと言われたのですが……」
「まあ、そうだったのですね! こうしてはいられませんわ。それではパトリック卿、少々お待ちくださいませ!」
がばっと顔を上げたアナベルは、メイドを連れて浴室へと早足で向かった。
剣術の稽古でにじみ出た汗を洗い流し、メイドたちの手によって徹底的に磨かれ、美しいドレスを身にまとい、寒くないようにコートを羽織る。
三十分もしないうちに出掛ける準備を終え、パトリックのもとに戻ると彼はアナベルを見て頬を赤らめた。
「どうでしょう、わたくし、貴族に見えますか?」
「え、ええ。国を探しても、アナベルさまよりも美しい人はいないと思いますよ」
「まあ、お上手」
口元に手を当てて、ころころと鈴を転がすように笑うアナベルに、パトリックは赤面したままぎこちない動きで馬車へ案内する。
「……大丈夫、ですわよね」
「白昼堂々襲い掛かってくる間抜けはいないと思います」
「……いいえ、なんでもありませんわ。わたくしはわたくしにできる最善を尽くします」
王妃イレイン――彼女の本性がどんなものであるか、アナベルはまだ知らない。
ただやはり、あの作り物めいた美しさは、思い出すだけでもゾッとする。
「とりあえず、今日の訓練はこれまでです。汗を流してきてください。今日は陛下に頼まれてアナベルさまの護衛になりましたので、外に行きましょう」
「えっ?」
「あれ、聞いていませんか? アナベルさまが慈善活動をしたいそうだから、どんな慈善活動にするのか街を見ながら相談に乗ってほしいと言われたのですが……」
「まあ、そうだったのですね! こうしてはいられませんわ。それではパトリック卿、少々お待ちくださいませ!」
がばっと顔を上げたアナベルは、メイドを連れて浴室へと早足で向かった。
剣術の稽古でにじみ出た汗を洗い流し、メイドたちの手によって徹底的に磨かれ、美しいドレスを身にまとい、寒くないようにコートを羽織る。
三十分もしないうちに出掛ける準備を終え、パトリックのもとに戻ると彼はアナベルを見て頬を赤らめた。
「どうでしょう、わたくし、貴族に見えますか?」
「え、ええ。国を探しても、アナベルさまよりも美しい人はいないと思いますよ」
「まあ、お上手」
口元に手を当てて、ころころと鈴を転がすように笑うアナベルに、パトリックは赤面したままぎこちない動きで馬車へ案内する。
「……大丈夫、ですわよね」
「白昼堂々襲い掛かってくる間抜けはいないと思います」