【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「――あの、助けてくれてありがとう、ございます」
「行き倒れになっている小さな女の子を、見捨てるわけにもいかないだろう?」
「うん。びっくりしちゃった。森の中で倒れていたのよ。ねぇ、話せる範囲でなにがあったのか、教えてくれないかしら?」
「……」
アナベルは目を伏せて、それからミシェルとクレマンを見る。そして、口を開いた。
「……実は、自分の名前以外覚えていないんです。崖から落ちたような気はするんだけど……」
アナベルは嘘をついた。初対面の人たちに、本当のことを伝えるのが怖かったからだ。
「崖から!? だからそんなにボロボロだったのね……。可哀想に、こんなに小さい子が……」
うるうると瞳を潤ませて、ミシェルがアナベルを抱きしめる。
胸の谷間を押し付けるように抱きしめられて、アナベルは「ひゃぁ」と小さな悲鳴を上げる。母以外の村の感触に驚いたのだ。
「あ、ごめーん! 苦しかった?」
ミシェルは眉を下げて、もう一度「ごめんねぇ」と謝る。
アナベルはふるふると首を横に振った。
それが、アナベルと旅芸人たちの出会いだった。
「行き倒れになっている小さな女の子を、見捨てるわけにもいかないだろう?」
「うん。びっくりしちゃった。森の中で倒れていたのよ。ねぇ、話せる範囲でなにがあったのか、教えてくれないかしら?」
「……」
アナベルは目を伏せて、それからミシェルとクレマンを見る。そして、口を開いた。
「……実は、自分の名前以外覚えていないんです。崖から落ちたような気はするんだけど……」
アナベルは嘘をついた。初対面の人たちに、本当のことを伝えるのが怖かったからだ。
「崖から!? だからそんなにボロボロだったのね……。可哀想に、こんなに小さい子が……」
うるうると瞳を潤ませて、ミシェルがアナベルを抱きしめる。
胸の谷間を押し付けるように抱きしめられて、アナベルは「ひゃぁ」と小さな悲鳴を上げる。母以外の村の感触に驚いたのだ。
「あ、ごめーん! 苦しかった?」
ミシェルは眉を下げて、もう一度「ごめんねぇ」と謝る。
アナベルはふるふると首を横に振った。
それが、アナベルと旅芸人たちの出会いだった。