【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
 ミレー孤児院をあとにし、別の孤児院に向かう。

 アナベルはパトリックとともに、王都の孤児院を歩き回った。

 ミレー孤児院で提案したことを伝えると、好意的に受け取る人、怪訝(けげん)そうに眉をひそめる人、それよりももっと待遇をよくしてほしいとねだる人――……様々な反応だった。

 特に、最後に関しては、子どもたちはボロボロの服を着ていたのに、孤児院の院長と子どもたちを世話している人たちは、上質な絹のワンスピースを着ていたことが心に引っかかる。

「パトリック卿。あの孤児院、寄付金を横領(おうりょう)しているのでは?」
「……やっぱり、そう思います?」

 こくりとアナベルは首を縦に振った。

「前から気になってはいたんですが、あそこは王妃陛下が一番目をかけている場所で……」
「王妃サマが?」

 確かにあの孤児院の子たちの顔は、とても可愛らしかったり整っていたりと、将来美人や美形になると思われる子どもたちが多い。

(未来のメイドや執事候補……?)

 いや、そんなまさか。

 アナベルはその考えを振るい払うように頭をぶんぶんと横に振った。

「気になりますわね……」
「そうですね」

 パトリックは本当に気にしているのか、いないのか、良くわからない口調で同意する。

「……パトリック卿はあまり、この孤児院に関わりたくないのですか?」
「ええ、まあ。王妃陛下が贔屓(ひいき)している孤児院ですので、アナベルさまが関わるとどう出るか……」

 自分の身を案じてくれているのか、とアナベルが目を丸くすると、パトリックは後頭部に手を置いて眉を下げた。
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