【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。

寵姫 アナベル 5話

「――わたくし、いろいろ知りたいの。特に、王妃サマのことを」

 頬に手を添えて、流し目でオーナーを見る。

 彼女は「へぇ?」と不敵に笑った。

「王妃陛下を探ろうっていうのかい。怖いもの知らずな嬢ちゃんだね」
「うふふ。あなただって知りたいと思いませんか? 王妃サマがどんな生活をしているのか、どんな怖いことをしているのか――……ねぇ、エルミーヌ、さん?」

 目の前の女性の名を口にすると、彼女は息を()んだ。その名を知っているものは限られているからだ。

「……あんた、ミシェルの関係者かい?」

 アナベルはただ目元を微笑む。

 ――それが、答えだった。

「……そう、ミシェル……()ってしまったのね……」
「ミシェルさん、エルミーヌさんのことを気にしていました。お別れもろくに言えずに王都を飛び出したからからって。……そしていつも、あなたことを話すときは声が優しかった」

 懐かしむようにアナベルは目を伏せる。もしもし王都に行くことがあれば、彼女が元気で暮らしているかを確かめてほしい、と。

 アナベルがまだ幼い頃にした約束を、今果たしている。

『黄金のりんごには秘密がある』

 ――それは、ミシェルとエルミーヌがふたりで決めた合言葉。

 今では、この娼館の裏の合言葉になっている。

 表向きは普通の娼館だが、彼女たちの裏の顔は『なんでも屋』だ。
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