【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「それと、もう一つ……お願いがあるのだけれど」
「お願い?」

 アナベルはすっとソファから立ち上がり、ヴィルジニーのもとへ近付いてこっそりと耳打ちする。

「男性の(よろこ)ばせ方を、教えてほしいの」
「……はあっ?」

 ぎょっとしたように目を見開くヴィルジニーに、アナベルは頬を赤らめて「切実な願いですのよ?」と唇を尖らせた。

 まるで少女のような様子に、すっかりと意表を突かれ、ヴィルジニーの警戒心が(ほど)ける。

「ちょっとそこの騎士さんや、悪いけれど、部屋から出ていってくれないかい? これから先は女同士の話だからさ」
「え、しかし……」
「お願いします、パトリック卿」
「……わかりました。扉の前に待機しておりますので、なにかありましたらすぐに呼んでください」
「ありがとうございます!」

 パトリックは小さく頭を下げ、部屋から出ていった。

 ヴィルジニーはアナベルを隣に座らせると、「それで、男の悦ばせ方、だっけ?」と頬に人差し指を添える。

「わたくしが踊り子だったことは、ご存知ですか?」
「ああ、踊り子が寵姫になったって号外に載っていたからね。それが?」
「わたくし、経験がまるっきりありませんの。どうすれば彼を悦ばせることができるのか、わからなくて……」

 初めて夜を過ごしたときは、エルヴィスにリードをされて、アナベルはただ彼に身を任せていた。

 確かに気持ち良かったし、なによりも彼を感じられる行為だと思う。
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