【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「……踊り子なのに、経験がない?」

 疑惑の目でアナベルを見るヴィルジニーに、こくりとうなずいた。

 そして、今までどうやり過ごしていたかを説明すると、彼女は顔をうつむかせ肩を震わせる。

「み、ミシェルらしい……!」

 ひぃひぃと腹を(かか)えて笑い出した彼女に、アナベルは眉を下げる。

「彼女の乙女チックな考えを、ずーっと守っていたわけだ。なるほどねぇ……。うーん、でもねぇ、こればかりは……あたしたちに習うよりは、その()に聞いたほうが良いんじゃない?」

 顔を上げてニヤニヤと笑うヴィルジニーに、アナベルはきょとんとした表情を浮かべ、「なぜ?」と問いかけた。

「あんたは真っ白だから、彼色に染まることができるってわけさ」
「……そまる?」

 あまりピンと来ていないようで、ヴィルジニーは「箱入り娘かい?」とどこか呆れたように息を吐く。

「……そうね、言い方を変えましょう。彼の好みになるってこと」
「習わなくても?」
「そう。初めての相手ならなおさらだ。どうしてもうまくいかないってなったら、相談しにおいで。だが、まずは彼と相談してからね」

 真剣な表情で言われて、アナベルは考え込むように顎に指をかけ、「そんなもの……?」と小声で言葉をこぼす。
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