【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「あ、て、テメェッ、このアマ! オレになにした!?」

 アナベルの姿に気付くと、威嚇(いかく)するように大声を上げる。

 そのつんざくような声に表情をしかめるアナベルを見て、エルヴィスが彼女の前に出ると、男は怪訝そうにエルヴィスを見上げた。

「私の寵姫(ちょうき)を襲った理由は?」
「ハンッ! そンなの教えるワケねェだろ!」
「口の中に仕込まれていた毒薬は、すべて取り除きました。自害しようとしても無駄です」
「……あの、エルヴィス。わたくしが少し、試しても良いかしら……?」

 エルヴィスの袖を引っ張って、アナベルが問う。彼はその前に、パトリックに記録用のオーブを持ってくるように伝えた。

 パトリックは「かしこまりました」と、すぐに記録用のオーブを持ってくるために足早に去っていく。

「記録用のオーブ?」
「魔道具だ。最近、研究がうまくいってな。オーブがあれば、どんな些細なことも記録できるんだ」

 ひそひそと小声で話し合うエルヴィスとアナベル。男はイラついたように、

「なンなンだよ、テメェらは!」

 と怒鳴った。

「――この国の王と、私の愛する寵姫だが?」

 男に見せつけるように、アナベルの細い腰を抱く。

 男は「ケッ!」と悪態をつくと、どっかりと座り込んだ。

 口の中に仕込んでいた毒薬は取り除かれ、武器も取り上げられてなにも持っていない。

「お待たせしました」

 パトリックが持ってきた記録用のオーブをエルヴィスが受け取り、アナベルに対して「では、始めようか」と声をかけた。
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