【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「いやぁ、魔法って便利だねぇ」

 魔法でどんどんと、なにかが出来上がっていく。

 女性たちが協力して、湖の一部を魔法で区切ったようだ。

 ミシェルが近付いて、そっと湖の表面に触れると――湯気が立ち込める。

「えっ!?」
「さすがミシェル! さぁ、みんなで入るわよ!」
「やったぁ!」
「ミシェル最高ーっ!」
「はいはい、しっかり温まるんだよ!」

 女性たちはとてもはしゃいでいた。お湯に浸かり「あぁ……」と気持ちよさそうに恍惚(こうこつ)の表情を浮かべていた。

 ミシェルの手によってアナベルも服を脱がされ、お湯に浸かる。

「……あれ?」

 アナベルが自分の身体を見て、思わず目を丸くして声を上げた。

 それに気付いたミシェルが、「どうかした?」と声をかけて顔を覗き込む。

「傷がない……?」
「ああ、回復魔法をかけたからね。回復魔法をかけても丸一日は目覚めなかったら、よっぽど疲れていたんだろうねぇ……」

 よしよし、と頭を撫でられたアナベルは、他の人たちからも同情の視線を向けられていることに気付いて、女性たちを見渡す。

 顔を隠すように、ぎゅっとミシェルに抱きついた。

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