【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「どうした?」

 エルヴィスの声を聞いて、扉の向こうにいるメイドが「いらっしゃったんですね」とどこか安堵したような声を出す。

 アナベルとエルヴィスは顔を見合わせて、首をかしげる。

「どうぞ、入って?」

 メイドに入るようにうながすと、なにかを手にしたメイドがアナベルたちに近付いてきた。

(カード?)

 彼女が手にしているものをエルヴィスに渡す。彼はカードを受け取り、誰からかを確認する。

「……イレイン……」
「えっ」

 カードの内容を見て、エルヴィスはくしゃりとカードを握り潰した。

「な、なにが書かれていましたか?」
「……きみは知らないほうが良い」

 カードをポケットにしまったエルヴィスに、アナベルは頭の上に疑問符を浮かべる。

(王妃サマがわざわざ、エルヴィスに伝えるようなこと……?)

 なんだろう、と考えてみたが思いつかなかった。

 メイドは不機嫌そうなエルヴィスを見て、急いで一礼をしてから「それでは、失礼いたします」と逃げるように部屋から出ていく。

「怖がられていますよ、エルヴィス」
「今に始まったことではない。……が、そうだな、きみに慰めてもらうとするか」
「ふふ、わたくしで良ければ、喜んで」

 ――どちらかと言えば、アナベルのほうが慰めてもらった。

 エルヴィスとともに夜を過ごすことで、恐怖心は(やわ)らいでいき、熟睡することができたからだ。
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