【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「……王妃サマは、エルヴィスのことを愛しているのかしら……?」
「個人的な意見なのですが……」

 そう前置きして、メイドは自分の意見を伝える。

「私には、王妃陛下はエルヴィス陛下のことを()としか見ていないように感じました」
「……駒?」

 メイドはゆっくりと首を縦に動かす。

「自分が贅沢をするために、エルヴィス陛下を利用していると思います。もちろん、王妃ですからお金を使うのは当然でしょう。ですが、度が過ぎるというものです」
「……あなたは、どうしてそんなに詳しいの?」
「長く勤めていますから。王城のメイドをしていたこともあるんですよ」

 昔を懐かしむように目元を細め、すくっと立ち上がった。

「さあ、まずは湯浴みをしましょうか」

 にっこりと笑顔を浮かべて手を差し出すメイドに、アナベルはその取って立ち上がる。

「そうね、お願いするわ」

 その前に、アナベルはもう一度カードに視線を落とし、大事そうにサイドテーブルの引き出しにしまう。

 カードには『昨日の男は王城で引き取る。安心してほしい。愛している』という短いメッセージが書かれていた。

(耳で聞く『愛している』も良いけれど、こうして形に残るカードに書いてくれるのも良いものね……)

 と、頬を赤らめながら考えるアナベルだった。
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