【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「綺麗にできましたね。では、これを王妃陛下に渡しましょう」
「メイドに頼めばよいかしら?」
「ええ。では、それを頼んだら今日の授業を開始しましょう」

 にっこりと微笑むロマーヌの瞳がきらりと光る。

 アナベルは内心「ひぇっ」と叫んだが、表には出さずに微笑む。

「よろしくお願いいたしますわ、カルメ伯爵夫人」

 手紙は近くにいたメイドに頼む、アナベルはロマーヌにビシバシとスパルタで教え込まれた。

 文句を言わずにロマーヌについてくるアナベルは、彼女にとっても大事な生徒になっていた。

 一通りのことを終えて、昼食に時間になり、一緒に食べることになった二人は、食堂まで歩いていく。

「……カルメ伯爵夫人、頼みたいことがあります」
「私に?」
「はい。……実は、娼館から三人ほどこの宮殿にきてもらうことになっています。その人たちにも、わたくしと同じように教養を身につけさせたいのです」
「娼館……?」

 目を丸くしたロマーヌに、アナベルは昨日のことを話した。

 彼女は口元に手を添えて、考え込む。

「なぜ、娼館だったのですか? いくら腕が良いからと言って、あまりにも無謀な賭けなのでは?」
「――あの娼館にいる人たちは、男性の扱いエキスパート。……さらに、自分の身も守れるほどの腕前と、持ち前の美貌(びぼう)で情報を得てくれるでしょう。――王妃イレイン側の、男性を相手にしても」

 にやり、とアナベルは口角を上げた。
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