【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
 一つでも多く、王妃イレインの情報がほしい。

「貴族の男性を相手にするなら、教養も必要となるでしょう? もちろん、娼館でもそれ相応の振る舞いを学んではいるでしょうけれど……より深く、美しく、男性を魅了できる人が必要だと思ったのです」

 アナベルはぴたりと足を止め、胸元で手を組んでロマーヌを見つめる。

「……ダメですか……?」

 不安そうに揺れる瞳を見て、ロマーヌはふるふると首を横に振った。

「よかった! それは数日後に迎えに行きますわね」
「……面白いことを思いつきますね、アナベルさま」
「あら、適材適所という言葉があるでしょう? わたくしは、それを実行しているだけですわ」

 貴族の令嬢しかしらない男性たちにとっては、刺激的かもしれないが、その刺激がうまくいくことをアナベルは祈っている。

「どんな方々がこちらへ?」
「三人ともわたくしに劣らず美女です。色気はわたくしよりもありますわね。……それと、護衛を兼ねていますので、強いと思います」

 彼女たちの実力を、アナベルは知らない。そして、彼女たちもまた、アナベルが彼女たちをどう扱おうとしているのか知らないだろう。

 知っているのは、アナベルの護衛をするということだけだろう。

「うふふ、楽しくなりそうですわね」

 にっこりと微笑むアナベルの瞳には、炎が宿っている。ロマーヌはゴクリと唾を飲んだ。
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