【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
寵姫 アナベル 15話
(王妃陛下、どうして私はここにいるのでしょうか……)
ガタンゴトンと揺れる馬車の中、アナベル、ロクサーヌ、イネス、カミーユ……それともう一人、王妃イレインから『差しあげる』と書かれていた侍女――マルトが乗っていた。
「エルヴィス陛下はいらっしゃるのですか?」
「どうかしら、お忙しい方だから……。あら、マルト、そんなに緊張しなくても大丈夫よ?」
アナベルに微笑みかけられて、マルトはびくっと身体を震わせる。
――王妃イレインからいただいた侍女、マルト。彼女は挨拶もそこそこに着せ替えられて馬車に押し込まれ、現在に至る。視線をあちこちに飛ばして、顔をうつむかせてしまった。
「ごめんなさいね、慌ただしくて。わたくし、夜会に参加するのは初めてなので……いろいろ教えてくれると助かりますわ」
口元で指を合わせて目をキラキラと輝かせるアナベルの表情は、まるで夢見る少女そのもの。
「え、あ、はい……」
マルトは歯切れの悪い言葉を返した。それを見ていたロクサーヌは、憐れむようにマルトを見る。
(王妃イレインと、寵姫アナベル。どちらにつくかを考えているのかしら。それとも――……)
目元を細めるロクサーヌに、マルトは顔をこわばらせた。
ガタンゴトンと揺れる馬車の中、アナベル、ロクサーヌ、イネス、カミーユ……それともう一人、王妃イレインから『差しあげる』と書かれていた侍女――マルトが乗っていた。
「エルヴィス陛下はいらっしゃるのですか?」
「どうかしら、お忙しい方だから……。あら、マルト、そんなに緊張しなくても大丈夫よ?」
アナベルに微笑みかけられて、マルトはびくっと身体を震わせる。
――王妃イレインからいただいた侍女、マルト。彼女は挨拶もそこそこに着せ替えられて馬車に押し込まれ、現在に至る。視線をあちこちに飛ばして、顔をうつむかせてしまった。
「ごめんなさいね、慌ただしくて。わたくし、夜会に参加するのは初めてなので……いろいろ教えてくれると助かりますわ」
口元で指を合わせて目をキラキラと輝かせるアナベルの表情は、まるで夢見る少女そのもの。
「え、あ、はい……」
マルトは歯切れの悪い言葉を返した。それを見ていたロクサーヌは、憐れむようにマルトを見る。
(王妃イレインと、寵姫アナベル。どちらにつくかを考えているのかしら。それとも――……)
目元を細めるロクサーヌに、マルトは顔をこわばらせた。