【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「さすが、ルサージュ令嬢の夜会ですわね」

 感心したようにつぶやくアナベル。

 アナベルたちがルサージュ伯爵邸に入ると、その場にいた全員の目を奪うことに成功した。

 事実、彼女たちはとても目立っていた。

 アナベルを筆頭(ひっとう)に、ロクサーヌ、イネス、カミーユの姿を見た貴族たちは、その美しさに言葉を失い魅入(みい)っている。それと同時に、彼女たちの近くにいる少女にも気付き、首をかしげる。

 なぜアナベルたちと一緒にいるのか、と――……

 そのうちに、名前を呼ばれた貴族たちは、夜会の会場に足を踏み入れる。段々とこの場にいる人数が減っていく。

 アナベルは、コラリーに一つ、お願いをしていた。

 自分たちを呼ぶのは、最後にしてほしい、と。

 アナベルたちは厚手のコートを脱ぎ、一瞬その美しさに目を(みは)る使用人に対し、妖艶(ようえん)に微笑む。

 我に返った使用人がコートを預かり、ついにアナベルの名が呼ばれた。

 会場内に入ると、先程よりももっと視線が彼女たちに集中する。

 今日のアナベルのドレスは、身体のラインを強調するようなマーメイドドレスだった。

 ロクサーヌたちも、それぞれアナベルと同じようなマーメイドドレスを着ていた。ただ一人、マルトだけは別のドレスだ。

 マルトのドレスは、王妃イレインが渡したものであった。
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