【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
 食堂にたどりつくと、扉の前に執事が立っていて「お待ちしておりました」と胸元に手を置いて(うやうや)しく頭を下げ、扉を開いた。

 彼女たちの目に飛び込んできたのは、たくさんのごちそうだ。

「アナベルさま、これはいったい……?」

 マルトがぽかんと口を開け、ハッとしたように顔を上げてアナベルを見上げて問いかける。

 アナベルはエルヴィスから離れて、代わりにマルトの手を取って食堂の中に足を踏み入れた。

「今日はあなたたちの歓迎パーティーよ!」

 無邪気な笑顔を見せられて、マルトは言葉を()む。

 ロクサーヌたちを座らせて、エルヴィスとアナベルも席についた。

「わたくしがメイドたちにお願いしましたの。改めて、よろしくお願いいたしますわね」
「こ、こちらこそ……」

 美味しいごちそうと美味しいお酒やジュースを堪能(たんのう)しながら、今日の夜会のことで盛り上がる。エルヴィスが「最初から参加したかったものだ」とアナベルに甘く伝えるから、彼女はぽっと頬を赤らめる。

 すべてのごちそうやお酒、ジュースがなくなるまで、彼女たちの歓迎パーティーをした。

「んんん……」

 アナベルが眠そうに目元を(こす)ろうとするのを、エルヴィスが制する。

「ベル、眠いのなら運んであげようか?」
「……お願いしますわ、エルヴィス陛下」

 甘えたような彼女の声に、エルヴィスはふっと笑みを浮かべてふわりと抱き上げた。

「これから王城に戻らないといけないが……、ゆっくり休むんだぞ」
「はい、陛下……。寂しいけれど、我慢しますわ……」

 うとうととまどろみながらも、アナベルはふにゃりと笑う。

「あ、あの、アナベルのさまのお世話を、してもよろしいですか?」
「そうだな、頼む」

 マルトが立ち上がり、エルヴィスのあとを追って問いかける。彼はあっさりとアナベルのことを頼んだ。
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