【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
寵姫 アナベル 17話
エルヴィスはアナベルを起こさないようにゆっくりと歩き、寝室へ運ぶ。
マルトに扉を開けさせ、アナベルをベッドに下ろすと、彼女の髪を手で梳いて毛先に口付けた。
マルトはぎょっとしたように目を大きく見開いたが、ちらりと彼に横目で見られて慌てて視線をそらす。
「……くれぐれも、よろしく頼む」
「は、はい。おやすみなさいませ……」
マルトはエルヴィスに頭を下げた。
彼は小さく息を吐いてから、寝室を出ていく。
ぱたんと扉が閉まり、アナベルと二人きりになったマルトは、ベッドまで近付いて彼女の様子を眺めた。
じっと見つめて、羨ましそうにため息を吐く。
「……良いわね、あなたは。……それに比べて、私は……」
ぎゅっとドレスの裾を握りしめ、マルトは唇をかみしめた。
エルヴィスは寝室から出て、今は標的と二人きり。すっとドレスをまくり上げ、隠していたナイフを手にする。
(――あなたに恨みはないわ。ただ、こうしないと私が殺されてしまうから――……だから、ごめんなさい)
緊張から息を荒くし、ナイフの柄を両手で握り、ぐっと頭の上に持ち上げ――アナベルの心臓をめがけて一気に振り下ろした。
アナベルの身体から、血が流れる。ふわり、と甘い香りが漂い、マルトの鼻腔をくすぐる。
――やった、やってしまった……
マルトは乱心したように、ナイフを何度も何度も振り下ろす。
そのたびに、彼女の身体から真っ赤な血の花弁が飛び散る。
何度も心臓を刺し、これで生きている人間などいないだろうと安堵して、マルトはアナベルから離れた。
マルトに扉を開けさせ、アナベルをベッドに下ろすと、彼女の髪を手で梳いて毛先に口付けた。
マルトはぎょっとしたように目を大きく見開いたが、ちらりと彼に横目で見られて慌てて視線をそらす。
「……くれぐれも、よろしく頼む」
「は、はい。おやすみなさいませ……」
マルトはエルヴィスに頭を下げた。
彼は小さく息を吐いてから、寝室を出ていく。
ぱたんと扉が閉まり、アナベルと二人きりになったマルトは、ベッドまで近付いて彼女の様子を眺めた。
じっと見つめて、羨ましそうにため息を吐く。
「……良いわね、あなたは。……それに比べて、私は……」
ぎゅっとドレスの裾を握りしめ、マルトは唇をかみしめた。
エルヴィスは寝室から出て、今は標的と二人きり。すっとドレスをまくり上げ、隠していたナイフを手にする。
(――あなたに恨みはないわ。ただ、こうしないと私が殺されてしまうから――……だから、ごめんなさい)
緊張から息を荒くし、ナイフの柄を両手で握り、ぐっと頭の上に持ち上げ――アナベルの心臓をめがけて一気に振り下ろした。
アナベルの身体から、血が流れる。ふわり、と甘い香りが漂い、マルトの鼻腔をくすぐる。
――やった、やってしまった……
マルトは乱心したように、ナイフを何度も何度も振り下ろす。
そのたびに、彼女の身体から真っ赤な血の花弁が飛び散る。
何度も心臓を刺し、これで生きている人間などいないだろうと安堵して、マルトはアナベルから離れた。