【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
 ◆◆◆

 ――数ヶ月後。

 舞踏会の準備は滞りなく進んだ。国の貴族たちを招待したエルヴィスは、隣にいるアナベルの肩に触れた。

「……どうしました?」
「……いや。ついに、明日だ……」
「ええ、今からとても楽しみですわ」

 にこりと微笑むアナベルは、エルヴィスにもたれかかる。

 ――あの日、アナベルは魔法を使った。

 香りの魔法と幻想の魔法で彼女を(あざむ)いたのだ。

「まったく、末恐ろしい魔法だ」
「うふふ、便利な魔法でしょう? ……明日、ロクサーヌたちも会場に入れますからね」
「わかっている。王妃イレインがどんな人物なのか、貴族たちに見せつけるとしよう」

 この数ヶ月、ロクサーヌ、イネス、カミーユの働きで、王妃イレインの悪事の証拠が山のように揃えることができた。

 彼女たちはイレインに近い貴族の男性たちを巧みに誘惑し、様々な証言を得た。

 そこから調べに調べて、イレインが今まで行っていたことを知り、顔をしかめていたことは記憶に新しい。

「……まさか、貴族の男性を誘惑して、とは……」
「彼女たちの得意分野ですわ。……それにしても、本当に陛下の子ではなかったのですね」

 イレインが産んだ子どもに関しても、調べが上がっていた。

「ああ。まさか私に似たような男を(たぶら)かしていたとはな。……どうやら私は、とことんイレインに(あなど)られていたらしい」
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