【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
 自分自身に呆れたようにつぶやくエルヴィスに、アナベルは「……王妃イレインがおかしいだけでしょう」とバッサリ言い切る。

「……侯爵家の方と、そういう行為をしていたとは思いませんでしたね。しかも、口封じされていましたし……よく見つかりました」
「記録用のオーブを発明したものを、表彰しなくていけないな……」

 記録用のオーブを発明した人物は、『記録用』ということを隠していろいろな場所にオーブを配ったらしい。置物として置いてほしいと、大なり小なり、様々なオーブを。

 その結果、粗悪品で記録できないものも多くあったが、イレインや侯爵という自分よりも身分の高い人には質の良いオーブを渡していたらしく、バッチリと証拠が残っていた。

「わたくしたちにとっては、ラッキーでしたけれど」
「記録用のオーブ、とは言っていなかったようだからな。まさか数年前のことまで記録されているとは……」

 日付まで記入されているオーブの映像。

 これを見たイレインの表情を思い浮かべて、アナベルは口角を上げる。

「――ところで、舞踏会のテーマは本当に、『リボン』で良かったんですの?」
「ああ。リボンは結ぶもの。そして……解けるものだからな」

 エルヴィスは自分の手を見つめる。そっと、アナベルが自分の手を重ねた。

「……明日だ、ベル」
「ええ、エルヴィス。最後まで、あなたと一緒に」

 きゅっと手を絡め、二人は見つめ合う。

 ――王妃イレインから、すべてを奪うときがきた。
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