【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
5章:エピローグへの足音

エピローグへの足音 1話

 その日は晴天だった。

 透き通るような青空の晴天。

 アナベルはまぶしそうに目元を細めて、メイドたちと準備を始める。

 極上のシルクで作られたドレスは肌触りがよく、アナベルにとても似合っていた。

 髪を結い上げ、ゆっくりと呼吸を繰り返す。

 化粧をした鏡に映った自分の姿は、完璧な貴族の淑女(レディ)だった。

「……今日で、すべてを終わらせるつもりです」

 アナベルの近くにいたメイドたちは、ぴたりと動きを止め――神妙な顔でうなずく。

「はい、アナベルさま。私たちは、アナベルさまを信じます」

 メイドを代表するように、年長のメイドが柔らかい口調で頭を下げた。

 アナベルは眉を下げて、それから美しく、微笑む。

「……ありがとうございます。わたくしを信じてくれて。必ず、戻ってきますわ」

 ――信じてくれたこの人たちを、裏切る結果にはしない。

 ロクサーヌたちは、すでに会場に向かっている。

 そろそろ自分も向かおうと玄関まで歩いていると、エルヴィスが彼女を迎えた。

「ごきげんよう」
「――ああ。……良く似合っているな、そのドレス」
「軽くて動きやすいので、とても気に入りましたわ」

 にっこりと笑ってドレスの裾を持ち上げるアナベルに、エルヴィスは「それは良かった」と優しい口調で言葉をかけ、アナベルに手を差し出す。
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