【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。

踊り子 アナベル 6話

 自分のお腹が空いていることに気付かないくらい、アナベルは現状を把握(はあく)できていなかったようで、もぐもぐと黙って食べている。

 ミシェルとクレマンは視線を()わしてうなずいた。

 お腹が満たされたところで、ミシェルとクレマンが同時に「これからどうしたい?」とアナベルに(たず)ねる。

 アナベルはミシェルを見てから、クレマンに顔を向けた。

「……えっと、その前に……どうして、こんなにたくさんの人と一緒に旅をしているの?」
「ああ、伝えてなかったか。オレたちは旅芸人なんだ。各地を巡って、芸を披露(ひろう)して生計を立てている」
「……旅芸人?」
「あ、そっかぁ。アナベルちゃんは見たことないかもねぇ。こういうのよ」

 すくっとミシェルが立ち上がり、毛皮のコートを脱ぐと近くに置いてあった剣を持ち、鞘から抜く。そして、その剣を器用に操りながら舞い始める。

 彼女の身体は柔らかく、まるで羽が生えているかのように軽やかな剣舞だった。

「さすがミシェル!」
「あの剣舞はやっぱりミシェルだけのものよねぇ」
「うーん、いつか抱きたい……」
「子どもの前でなにを言ってんだ!」

 ばこっと殴られたのは若い男性だった。「いってぇな!」と文句を言いつつ、アナベルの視線に気付いて、気まずそうに肩をすくめる。

 舞終わり、頭を下げるミシェルに、みんな盛大な拍手を送った。

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