【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
 イレインは大きく目を見開いた。

 エルヴィスが冷めたまなざしをイレインに向ける。

 貴族たちは、ただ呆然と彼らのやり取りを見ていた。

 そして、どちらにつくべきかをすぐに考え始める。

「――数ヶ月前、面白いものが撮れた。見てみるか?」

 エルヴィスは長い足を組み、パチンと指を鳴らした。

 記録用のオーブがふわふわとエルヴィスのもとに飛んでいき、彼はがしっとオーブを掴む。

「これは、お前が送った侍女がベルを襲った記録だ――……」

 怒りに震えるような、重低音。

 オーブが再生され、あの日のことが会場内の全員に見えるように映し出された。

 アナベルが眠っていると思っていたマルトが、彼女のベッドを何度もナイフで刺している姿。

 顔は隠されているが、必死なのが伝わってきた。

「あのときは本当に驚きましたわぁ……」
「……」

 イレインは忌々しそうに、その映像を見つめている。

「これだけでは、私が指示したかどうかさえ、わからないではありませんか」

 しかし、やがて落ち着いたのか、くすっと笑いながら首を横に振った。

「それに、この映像ではただベッドを刺しているだけ。これだけなら、いくらでも作り出せるでしょう?」
「……では、こちらはどうだ?」

 エルヴィスが別のオーブを再生する。

 それは――王妃イレインの不貞を映したオーブだった。

「イレイン。お前の子は私の血を引いていない。そうだろう?」

 イレインは顔を青ざめたり、赤くしたりと忙しい。

 そんな彼女の様子を見て、アナベルはしみじみと息を吐く。

「……王妃陛下は欲求不満だったのですか?」

 くすりと笑うアナベルに、イレインは鋭い眼光を向けた。
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