【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。

エピローグへの足音 3話

 エルヴィスの宣言に、イレインの目が大きく見開かれる。

「ど、どういう意味でしょう、エルヴィス陛下。陛下を支え続けた(わたくし)をお見捨てになるつもりですの!?」

 カッと顔を赤らめて、イレインが抗議の声を上げる。アナベルはその様子をただ黙って見ていた。

「支え続けた……? 王妃という立場を利用して、散々と悪行をしていたことを、支え続けた、だと……?」

 地の底に響くような低い声を出すエルヴィスに、イレインの肩がビクッと震える。

「まさか本当に、全部自分の思い通りになると考えていたの?」

 くすっと笑われて、イレインはアナベルを睨みつけた。

「そんなこと、まかり通るはず、ないじゃなぁい?」

 こてんと首をかしげて、アナベルは美しく微笑んだ。そして、そのままイレインに一歩ずつ近付いていく。

 イレインはじりじりと後退り、近くにいる人たちに対して「私を守りなさい!」と叫ぶ。

 だが、彼女の言葉を聞き入れる人はだれ一人としていなかった。

「言ったでしょう、王妃サマ。あんたの天下は今日で終わりだって。こっちはいろいろと証拠を集めたんだから。王妃サマが嬉々として拷問している場面もあるわよ?」

 オーブで記録できたイレインの悪行は数多くあった。

 彼女は知らない。そんなものが自分の住んでいる宮殿にまで置いてあったことを。

 さらに、数ヶ月前に国王からの『贈り物』として、指定の場所に置かれていたことを。

「あらぁ? そんなに唇を噛んだら、血が出ちゃいますよぉ?」
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