【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。

エピローグへの足音 4話

「そして一つ、報告することがある。――ダヴィド」

 名を呼ばれたダヴィドは、エルヴィスに近付いた。
「わたしは 国王の座を降り、ダヴィドに王位を(ゆず)る」

 きっぱりと、言い切る。

 それに驚いたのは会場の人たちだけではない。アナベルも彼らと同じように驚いた。

「え、エルヴィス陛下……?」
「……ずっと、考えていたのだ。私のようにイレインを諫めることができなかった王が、このままでいいのか、と。ダヴィドと私は従兄弟だ。王家の血を引いたダヴィドなら、不満はあるまい。もちろん、魔物が出たら私が討伐に向かう。国民のことを守りたい。そのためには――こうしたほうが良いと、考えた」
「そういうわけで、譲渡(じょうと)が済めばこのダヴィド・B・デュナンが王となる。いろいろ大変のことになると思うが、まあ、お互いがんばろう。この国を、より良くするために!」

 ダヴィドの明るい声に、会場内にいる貴族たちは呆気に取られていた。

 アナベルも呆気に取られていた一人で、ダヴィドとエルヴィスを交互に見る。ダヴィドはパチンとウインクをして、エルヴィスはただ微笑んでいる。

「――ど、どういうことなの……?」

 状況が飲み込めずに、アナベルが眉を下げてエルヴィスの袖を引っ張り、小声で(たず)ねた。
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