【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。

エピローグへの足音 5話

 エルヴィスは目元を細めてイレインを見た。彼女が「なんですって?」と顔をしかめる。

「私を魔物討伐に行かせたのは、イレインだろう。そのあいだに子どもを作り、産んだ。――ああ、その子は孤児院に預けることになっている。もう二度と、会うことはないだろう」

 イレインの子どもを孤児院に預けることに決めたのは、せめてもの慈悲だった。彼女の子は乳母がずっと育てていて、母親であるイレインはあまり関わりを持っていなかった。

「――どうして、そんな非道なことができるのですか!」
「非道はどちらだ? ……まったく、ここまで反省のない人間は初めて見る。……ああ、いや、考えてみれば魔女であったな」
「良い魔女に失礼ですわよ、陛下」

 くすっとアナベルが笑った。そして、イレインに一歩近付く。

「――でも、悪い魔女の結末なんて、いつも一つ。火あぶりになって終わりですわ。斬首刑よりも火あぶりのほうが良かったかしら?」
「バカなことを言わないで! 私は魔女なんかじゃないわ!」

 イレインの悲鳴にも似た声が地下牢に響く。

「――それを決めるのはお前じゃない。我々だ」

 エルヴィスの冷たい声と態度に、イレインは鉄格子を握りしめてわなわなと震えた。
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