【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。

エピローグへの足音 6話

 そして、(またた)く間にイレインの斬首刑の執行日になった。

 イレインは普段の派手なドレスではなく、みすぼらしい格好になっていた。化粧もしていないため、誰だかわらないくらいになっていた。

 アナベルはその顔を見てゾッと背筋が寒くなる。

 美しいと言われていたイレインの美貌(びぼう)は、たった三日でかなり劣化していたからだ。

(若い女性の血を、浴びなかったから……?)

 そう考えて、アナベルはぶるりと震えた。自分を抱きしめるようにぎゅっと二の腕を掴み、(さす)る。

「寒いのか?」
「あ、いえ……。彼女の美貌が、あまりにも……」
「ああ、一気に老け込んだな。たった三日で、このようなことになるとは……」

 どうやらエルヴィスも意外だったらしい。

 アナベルはエルヴィスに近付くと、彼はそっと自分のマントを彼女に羽織らせた。

「斬首刑だ。見なくてもいいんだぞ」
「……いいえ、わたくしには見届ける義務があります」

 首を緩やかに横に振り、アナベルは真っ直ぐにエルヴィスを見上げた。この計画に参加した自分には、彼女の最期を見届ける義務があるのだと、固い決意を宿した瞳で彼を見つめ続ける。

「……そうか。……では、刑を執行しよう」

 エルヴィスがすっと片手を上げた。

 イレインが断頭台へ連れていかれ、そこに姿を見せる。

 王妃が処刑されることを知った民衆は、その姿を一目見ようと集まっていた。
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