【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
 ――自分が使っていた部屋のナイトテーブルの上に、ブローチは置いてきた。

 置手紙を用意して、自分の想いを託した。ロクサーヌたちは娼館をやめ、アナベルについていくと言ってくれたので、ありがたくその提案を受け入れて四人で村まで向かう。

 一週間ほど時間をかけて、やっと村にたどりついた。

 記憶の中の村よりも、もっとひどいことになっていたが、アナベルは真っ直ぐに自分が暮らしていた家まで歩き、座り込む。

「――終わったよ、みんな……。みんなの仇、取れたよ……!」

 イレインはもういない。きっと今頃、地獄に落ちているだろう。

 アナベルが静かに涙を流していると、懐かしい声が聞こえた。

「……アナベル?」

 クレマンの声だった。旅芸人の仲間も、アナベルに気付くと一斉に「どうしてここへ?」と問いかける。

「あたし、復讐が終わったから報告に……」
「ついに魔女は退治されたのか、良かった……。これで、ミシェルも安心できるな、きっと」
「……そうね。……ところで、どうしてここにいるの?」
「いや、それが……」

 クレマンは後頭部をガリガリとかいて、説明を始めた。それを聞いて、アナベルは目を丸くする。

「村の、復興のため……?」
「ああ。旅芸人の仲間も増えたからな。拠点を持っても良いんじゃないかって話し合い、この場所にしようと思ったんだ」
「どうして? こんなに……焼かれて、なにもない……場所なのに」
「……だからだよ。一から作り出すんだ。みんなで。アナベルはどうする?」
「……参加していいの?」
「もともとこの村に暮らしていたのは、お前だろう?」

 クレマンの言葉にアナベルは小さく笑って、それから「参加するわ」と元気に答えた。
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