【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
エピローグ

エピローグ(完)

 ――王妃イレインの処刑から、五年という月日が流れた。

 焼き払われた村は、徐々にもとの村に……いや、それよりも発展した町へなりつつあった。

 人口も増え、クレマン率いる旅芸人たち、娼館から出てここで暮らしたいと言い出した人たち、新しい場所に興味を抱きわざわざ様子を見にきた人たち……

 こうしてどんどんと増えていった。

 そんな中、アナベルは以前住んでいた家を建て直し、そこで暮らしていた。ロクサーヌたちも一緒に。

「五年か……王位の譲渡に、結構時間がかかったようだな」
「前代未聞だからねぇ」

 新聞を読んでいたクレマンが、ぽつりとつぶやくとアドリーヌが肩をすくめた。

「まだまだ若い陛下が、王位を(ゆず)る、なんてさぁ。……そういえば、王じゃなくなったらどうするんだろう?」
「さあ……?」

 アナベルの家に集まり、談笑をしていると、ふと外が騒がしくなっていることに気付いた。

 どうしたのだろうとみんなで外に出ると、豪華な馬車が視界に入る。

 アナベルは大きく目を見開いた。記憶の中にある馬車と同じだったから。

 あのときは、中から幼いエルヴィスとイレインが出てきた。

 馬車の扉が開き、中から人が出てくる。五年間、一度も忘れたことがなかった人物。

(夢じゃ、ないの……?)

 アナベルは唇を震わせた。
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