【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
 そんなアナベルに、救いの手を差し伸べたこの旅芸人一座に感謝しつつも、彼女は自分の目的のためにがんばろうと心の中で決意を固める。

「これからよろしくねぇ、アナベルちゃん」
「よろしくお願いします、ミシェルさん」

 ミシェルが手を差し出したので、アナベルはその手を取って握手をした。

「あ、ミシェルだけずるーい」

 二人が握手をしているのを見て、女性陣が手を伸ばす。

「ゲッ、こっち来るなよ!」
「座長が肩車しているのがいけないんですよー」
「わかった、わかったから……、どさくさに紛れて股間を撫でんな、尻を揉むな!」

 きゃっきゃと楽しそうに笑う女性たちにたじろいているクレマン。ミシェルが「おいで」と腕を広げたので、避難するように彼女に手を伸ばす。

 ミシェルに抱っこしてもらって、女性たちに翻弄(ほんろう)されているクレマンの姿を見たミシェルが肩をすくめて、

「本当、うちの座長は女性にモテモテだわー。教育に悪いだろうから、隠れていようね~」

 と、アナベルを抱っこしたままテントの中に入った。

 そして、テントの中に入ると、先程の話かい男性がミシェルに「コートを」と手渡す。

「ありがとう。さっきの剣舞、どうだった?」
「え、ぁ、えっと、……とても、セクシーでした……」
「うふふ、ありがとう」

 毛皮のコートを受け取ってぱさっと羽織ると、男性に剣舞の感想を求めたミシェル。

 男性の感想を聞いて、パチンとウインクすると、男性は顔を真っ赤にさせてテントから出ていった。
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