【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
1章:踊り子 アナベル

踊り子 アナベル 1話

 ――この世界には、不思議なことが満ち溢れていた。

 魔法、精霊、妖精、その他にもたくさん。

 中でも、レアルテキ王国の王族に代々伝わる氷魔法は強力で、魔物の脅威(きょうい)退(しりぞ)け発展を()げていった。

 そんなレアルテキ王国の北部にある田舎の村で、二十年前、とても愛らしい女の子が生まれた。

「……まぁ、私のプラチナブロンドと、あなたのアメシストの瞳を()いだのね」
「みたいだな。これは将来、とっても美人になるぞ!」
「お母さん、僕にも赤ちゃん見せて」
「私にも!」
「ふふ。はいはい、順番よ。……これからよろしくね、アナベル」

 田舎で暮らしていたが、家族は仲が良く、生まれた女の子はたくさんの愛情を注がれて、すくすくと育つ。
 アナベルと名付けられた女の子は、村では『とても可愛い女の子』と注目されて、村人からの視線に逃れるように母親の後ろに隠れしまう。

「……ねえ、どうしてみんな、アナベルを見るの?」
「それはねぇ、アナベルがとっても可愛いからよ。みーんなアナベルの可愛さに、あなたを見つめちゃうの」
「いいなぁ、アナベルは可愛くて。私も可愛く生まれたかったなぁ!」
「あら、お姉ちゃんだって可愛いよ! ねぇ、アナベル?」
「うん、おねえちゃん、かわいいよ! アナベル、おねえちゃん大好き!」
「……ありがと。おねえちゃんもアナベルのことが大好きよ!」

 ぎゅっと姉に抱きつかれて、アナベルはくすぐったそうに笑った。

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