【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。

踊り子 アナベル 8話

 すべてのパフォーマンスが終わり、アナベルのもとに群がる男性たちに対して、彼女は小さく微笑みを浮かべた。

 座長のクレマンが近付き、男性たちになにかを話しているあいだにも、アナベルは彼らを眺めている。

 誰が自分の客になるのかを待っていると、最終的に一番高い金額を払った男性が、彼女と二人きりで過ごす権利を得た。

 アナベルは、その男性の腕に自身の腕を絡め、「それじゃあ、こちらへどうぞ?」と歩き出す。

 男性は鼻の下を長くしながら、アナベルについてきた。

「わ、なんだかすごく良い匂いがするね」
「リラックス効果のあるお香なの。あたしと過ごすのに、緊張していたらもったいないでしょ?」

 テントに入り、男性をベッドに座らせる。

 アナベルもその隣に座り、男性の言葉に対して優しく、そして艶やかに答えた。

「ね、せっかくだから、あたしの顔をじっと見て……?」

 男性の頬を挟むように両手で包み込み、自分と視線を絡めさせる。

 彼は明らかにうろたえていたが、段々と吸い寄せられるようにアナベルの顔に近付いていき――……唇が触れ合う前に、男性の頭がかくんと動いた。

 眠りに落ちたらしい。

「夢の中のあたしと、イイコト(・・・・)してね」

< 31 / 255 >

この作品をシェア

pagetop