【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
 男性をベッドに横にさせると、テントから出る。

 クレマンがアナベルに気付き、「どうだった?」と問いかけてきたので、すぐに「夢の中さ」と微笑む。

「その魔法、本当に便利だよなぁ」
「教えてくれたミシェルさんに、感謝しているよ」
「……そうだな。じゃあ、二時間くらいしたら戻ってこいよ。目覚めた客の近くにいなかったら、まずいだろ」
「はぁい。汗をかいたから、さっぱりしてくるねぇ」

 ひらりと手を振って、アナベルは簡易に作られたシャワーブースに足を運ぶ。

 他の人たちは見当たらなかった。

 しゅるりと衣装を脱いで、シャワーを浴びる。たっぷりかいた汗を流し、しっかりと身体と髪を洗ってから魔法で乾かす。

 その後、ブースに設置されている化粧水と美容液を素早く顔につけ、身体にもボディミルクを塗った。

 着替えは持ってきていないから、タオルを巻いてテントに戻る。

 テント内には、よほど良い夢を見ているのか、男性が気持ちよさそうに眠っていた。その隣でアナベルは肩をすくめた。

(そんなに良いものかしら?)

 アナベルはまだ、誰ともそういうことをしていない。

 彼女の魔法は男性の欲望を叶える夢だから、その人のやりたいことが夢の中で行われているはずだ。

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