【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。

踊り子 アナベル 9話

「さっきからなんか騒がしいと思ったら……、なんでここに陛下がいらっしゃるんでしょうか」

 アナベルのテントに移動して、座長であるクレマンが警戒するように彼を見る。

 クレマンの口から出た『陛下』の言葉に、アナベルは自分の予想が当たっていたことに目を丸くする。

「待っておくれよ、『陛下』ってことは……この人が『エルヴィス陛下』なの?」
「ああ。何度かお会いしたことがあるから、間違いない」
「……え、いったいいつ……?」
「それは……まぁ、追々話すとして。どうして陛下がこんなところに?」

 国を治める陛下は、城の中で仕事をしているとばかり思っていたから、こうして外に出ていることが不思議で怪訝(けげん)そうに表情を歪めるアナベル。

「久しいな、クレマン。……ミシェルは?」

 緩やかに首を横に振るクレマンに、エルヴィスは「そうか」と目を伏せた。

「ミシェルさんとも、知り合いなの……?」
「ああ、昔、少しな。それにしても……噂には聞いていたが、本当に美しい女性を連れているな?」

 からかうような口調だったので、アナベルはエルヴィスとクレマンの二人を交互に見て、「本当にどういう関係なのさ……」とつぶやく。

「……クレマン、そしてそこの女性。協力してほしいことがある」

 真剣なまなざしに、アナベルはもちろん、クレマンも息を()んだ。

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