【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「協力……?」
「先日、私の寵姫(ちょうき)たちが、何者かによって殺された」
「……寵姫が?」

 クレマンが目を大きく見開く。エルヴィスがこくりとうなずいて、真摯(しんし)な表情を浮かべてクレマンとアナベルを見る。

 アナベルは自分がここにいてもいいのだろうかと悩んでいると、エルヴィスはちらりと彼女に視線を向けてから、話を続けた。

「そうだ。名ばかりの寵姫で、一度も触れたことのない女性たちだったが……。その全員が、イレインよりも若く、美しい女性だったのだ」
「王妃サマが関係あるのかい?」
「恐らくな。……そこで、だ。私は彼女を貸してほしいと願っている」
「……彼女? って、まさかアナベルを!?」

 もう一度、こくりとうなずくエルヴィスに、クレマンだけではなくアナベルも絶句してしまう。

 それは、あまりにも突拍子のない申し出だったからだ。

「ま、待ってください。踊り子を寵姫にするおつもりですか?」
「ああ。イレインよりも若く美しい。そして――度胸のある女性だ」
「え、えええっ?」

 クレマンも、アナベルも困惑していた。そもそもどうしてエルヴィスがここにいるのかを(たず)ねたら、旅芸人の一座にとても美しい女性がいると噂になっていたかららしく、イレインよりも早く彼女に接触したから、と。

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