【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「……城の中に魔女がいるって、本当だったんですね」
「ああ、おそらく。……そうか、きみはあのときの子か」
「あたしのことを覚えているの?」

 会ったといっても、時間にして一分そこそこくらいだったはず。

 自分のことを覚えていることに驚きを隠せないアナベルに、クレマンが「なんだ、お前らも知り合いか?」と声をかける。

「知り合いってほどじゃないよ。あたしが王妃サマに声をかけられたときに、助けてくれたんだ。……ところで、魔女って?」

 クレマンは王妃、イレインの噂をアナベルに伝えた。

 男性と女性で評価が真っ二つに割れるらしい。

 イレインの侍女たちは彼女よりも年齢が若い少女が主だが、高確率で謎の死を()げている。

 噂では、王妃イレインが若い侍女から命を吸い取り若返っている……とささやかれているとのこと。

 男性からは(おおむ)ね好評で、二十代といっても通じるくらいの美貌(びぼう)と、ハリのあるしなやかな身体に魅了されているようだ。

「――はぁ……、王妃サマが……ねぇ……」
「自分の美を追求するあまり、国民のことが()えていないようだがな」
「ふぅん……。……で、なんで村が?」
「きみがいたから、だろう。ジョエルにきみを買わせたということは、きみのその美貌を失わせたかったから。ジョエルの女性の扱いはかなりひどいと聞いたことがあるからな……」

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