【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「……と、いうわけで、クレマン。この子をくれないか」
「えっ、あたしの意思は?」
「だってきみは、私とともに来るだろう?」

 どこからその自信が湧いているのだろうかと、アナベルが目を見開く。

 ……だが、確かに自分は彼に協力したいとも考えていた。だからこそ、心の内を見られたようでびっくりしたのだ。

「おいおい、うちのスターを抜き取るつもりですかぁ?」
「ダメか?」
「ま、そこは本人次第だけど……どうする、アナベル?」
「……ちょっと、考えをまとめさせてほしいんだけど……?」

 怒涛(どとう)の展開過ぎて、頭の中がぐるぐるとしているアナベルは、一旦落ち着いて考えたいと頼み込む。

 クレマンもエルヴィスもそれを了承し、アナベルに考える時間を与えることになった。

 期間は王都ティオールに到着する前日まで。

 もしも引き受けるなら、ティオールに到着したと同時に、寵姫が住まう宮殿へ向かうことになる。

(……人生、なにが起きるかわからないもんだねぇ……)

 アナベルはこれから先、どうなるのかわからない選択肢を迫られていることを感じて、空を見上げた。

 晴天だ。雲一つないほどの、まぶしい空の色。

「陛下の瞳の色と同じね」
「そうか?」

 ぽつりとつぶやくと、その声を拾ったエルヴィスも空を見上げた。
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