【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
 二人で空を眺めて、アナベルは彼へ視線を移す。

「……ところで、王妃と寵姫(ちょうき)ってどんなことをするの?」

 考えてみれば、王妃のことも寵姫のことも知らない。

 エルヴィスは彼女が寵姫のことを知りたいのだと考え、少しだけ表情を明るくさせて答えた。

「王妃は……そうだな、言うならばビジネスだ。貴族の仲を良くしたいから、とか国の繋がりを持つため、とかな。そして、王妃の一番の仕事は、王の子を産むこと」
「子どもを産むのが仕事?」
「そうだ。置けの血を絶やさないことが、王妃の役割だからな」

 アナベルは「……へぇ……」と言葉をこぼす。

 自分のお腹を(さす)ってみた。子を持つことがどんなことなのか、まだわからない。

「それに対し、寵姫は『恋人』だ」
「……うん?」
「王妃とはビジネス関係だが、寵姫は私個人の恋人だ。まぁ、勝手に連れてこられた婦人たちにとっては、地獄だったろうがな」
「夫人?」

 エルヴィスがこくりとうなずく。ちらりとアナベルを見てから、言葉を続けた。

「寵姫になれるのは、貴族の夫人だけなんだ。なかなかややこしいだろう?」
「……本当にね」
「それでも、歴代の寵姫たちは王を癒し、子を宿して産んだら、子は教会へ、寵姫は多額の金を持って別の人生を歩ませる……ということを繰り返してきたんだ」
「……ええと、それじゃあ……あたしが寵姫になるには、結婚しないといけないってこと?」
「……それなんだが、少し相談がある」

 真剣な表情でアナベルを見つめるエルヴィスに、彼女は首をかしげた。
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