【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「ごきげんよう。お集まりいただき、ありがとうございます」

　少女は周りを見渡してから、はつらつとした声で村人たちに声をかける。

　すっと頭を下げられた村人たちは、慌てて自分たちの頭を下げた。

　村長が前に出て、彼らを歓迎する言葉を紡ぐ。

「こんな田舎にようそこいらっしゃいました。ええと……その、なにもないところですが、ゆっくりしていってください」
「……ああ、そうしよう。では、村を一周する。村長、案内してくれないか」
「か、かしこまりました……！」

　村長がぺこぺこと頭を下げているのを見て、アナベルはじっと少年を見つめた。

　夜を思わせる黒髪に、アイスブルーの瞳。

　隣に立つ少女はマゼンタ色の髪をまとめていた。エメラルドのような瞳でもう一度周りを見渡し、小さく微笑む。

　少年とともに歩いていくのを見て、村長以外の村人たちが深い息を吐いた。

「――……そういえば、即位されたって聞いたことがあるような」
「まだあんなに小さい子だったとは……」

　そんな声がちらほらと耳に届いたが、アナベルにはよく理解できずに母親を見上げる。

　ぽん、と彼女の頭を優しく撫でながら、自宅に帰るようにうながすのを見て、家に帰って優しい兄と姉と一緒に遊んだ。

　国王陛下は一日この村に滞在し、また別の視察へ向かうらしい。

　家の中で遊ぶのも飽きたアナベルは、家から出て散歩をしていた。

　他の村人たちは国王陛下の視線を気にしながら、畑仕事に勤(いそ)しんでいる。

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