【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。

踊り子 アナベル 16話

 アナベルが戸惑っているうちに、エルヴィスたちは魔物をすべて倒していた。

 あっという間の出来事で、本当に魔物に襲撃されたのかと思うくらい、被害もなく全員無事だった。

「冬が近付いてきているから、少しでも蓄えようとしていたのかもねぇ……」

 アドリーヌの言葉に、バッと彼女を見るアナベル。

 彼女は「あら」と口元を隠し、目元を三日月のように細くして笑った。

「ほら、アナベルの愛しい人が怪我をしていないか、確認しにいきなさいな」
「……う、うん……」

 アドリーヌに背中を押されたアナベルは、エルヴィスまで駆けていく。

 足音に気付いたエルヴィスがアナベルを見て、ふわりと微笑んだ。

「怪我はなかったか?」
「ええ。陛下たちが守ってくれたから……。陛下たちは? 怪我、してない? 大丈夫?」
「そんなに心配しなくても大丈夫だ。傷一つもない」
「そうですよ、陛下は氷の魔法を使えるようになってから、すっごく強くなりましたからね!」
「そうなの?」
「はい、そりゃあもう。今まで陛下のことを嘲笑っていた大臣たちが恐れるほどに」
「おい、それを今、言うか?」
「そりゃあ言いますよ。寵姫(ちょうき)になるアナベルさんには、すべてを知る権利があるんですから」
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