【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。

踊り子 アナベル 17話

「……陛下? あの……?」
「どうぞ、剣を抜いて振るってみてください」
「……はい?」

 アナベルはじっと剣を凝視して、エルヴィスたちを見渡す。

 護衛の一人が剣を抜いて構え、「いつでもどうぞ」と言葉を放った。

(あたしの実力を見せろってこと、かしら?)

 それなら、とアナベルは剣を抜いて構えた。剣は一座にいる男性から習ったものだ。

 一度深呼吸をしてから、前を見据える。

「それじゃあ、行くわよ!」

 ダンッと大地を踏み込み、そのまま剣を振るう。

 カキン、と金属のぶつかる音が響き、護衛が意外そうに目を見開いた。

(ここまで迷いなく踏み込むとは……)

 エルヴィスは何度も打ち込むアナベルを見て、目元を細める。

(……本格的に教えても大丈夫そうだ)

 カキン、カキンと攻撃を仕掛けるアナベルの姿をじっと観察していると、もう一人の護衛が止めた。打ち込まれていたほうの護衛が片手を上げてエルヴィスを見る。

「陛下、この方なら剣術を教えても良いと思います。もちろん、力は男性よりも非力なので……それをカバーできるように魔法と組み合せば戦えるでしょう」
「本当!?」

 ぱぁっと満開の花のように笑顔を浮かべるアナベルに、「笑顔がまぶしい」と目を閉じる護衛たち。

 その笑みのままエルヴィスに駆け寄るアナベルに、彼は小さくうなずいた。
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